アメリカの給与所得者(サラリーマン、W-2所得者)が利用できる節税対策は限られていますが、主に1) 課税所得を減らす(税制優遇口座を利用) 2. 課税所得を減らす(控除最適化) 3. 税額控除(Credit)を適用する、つまり支払い税額を減額するという三つのアプローチに集中します。
1. 課税所得を減らす(税制優遇口座を利用)
以下の口座への拠出(投資)は、「調整後総所得(AGI)控除前の控除(Above-the-line Deduction)」として扱われるため、標準控除を選択しても利用でき、節税効果が非常に高いです。(税制優遇口座はこれに限りません。)
| 節税対策 | 概要とメリット |
|---|---|
| 企業型年金 (401(k) / 403(b)) | 拠出金が所得税の課税対象から外れます。特に会社がマッチング(Matching Contribution)を提供している場合、自己資金を使わずに資産を増やせるため、真っ先に満額拠出を目指すべきです。 |
| 個人退職口座 (Traditional IRA) | 401(k)に拠出してもなお余裕がある場合に利用します。企業年金に加入している場合、拠出できる所得に制限(MAGI制限)がありますが、成功すればその年の課税所得を減らせます。 |
| 健康貯蓄口座 (HSA) | トリプル・タックス・アドバンテージ(拠出時、運用時、医療費に使用した際の引出し時が全て非課税)を持つ最も強力な節税ツールです。HDHP(高額控除医療保険)に加入していることが必須条件です。 |
| 教育貯蓄口座 (529 Plan) | 拠出金に対する連邦税の所得控除はありません(多くの州では州税の控除があります)。運用益が非課税で、適格な教育費(授業料、寮費、教科書代など)に使用する際には非課税で引き出し可能。 |
いかにそれぞれの税制優遇の内容・タイミングを比較します。
| 節税対策 | 拠出時 | 運用益 | 引出時 |
|---|---|---|---|
| 企業型年金 (401(k) / 403(b)) | 所得控除可能 | 非課税 | 所得として課税 |
| 個人退職口座 (Traditional IRA) | 所得控除可能 | 非課税 | 所得として課税 |
| 健康貯蓄口座 (HSA) | 所得控除可能 | 非課税 | 医療費として使用する限り(適格使用)は非課税 |
| 教育貯蓄口座 (529 Plan) | 所得控除不可 | 非課税 | 教育費として使用する限り(適格使用)は非課税 |
2. 課税所得を減らす(控除最適化)
Tax Return時には、標準控除(Standard Deduction)と項目別控除(Itemized Deductions)のどちらか有利な方を選択します。現在の標準控除額は高いため、多くのサラリーマンは標準控除を選びますが、以下のような戦略で項目別控除の利用が可能かどうかを検討します。
| 控除対策 | 概要と検討ポイント |
|---|---|
| 住宅ローン利息 | 住宅を所有している場合、支払った住宅ローン利息は項目別控除の対象になります。不動産税や州・地方税(SALT)と合わせて、標準控除額を超えるか確認します。 |
| 州・地方税 (SALT) | 州所得税、固定資産税、売上税のいずれかを組み合わせて控除できますが、年間合計$10,000が上限と決められています(Married Filing JointlyでもSingleでも同額)。 |
| 慈善寄付 | バンドリング戦略:寄付金控除は項目別控除の対象です。標準控除額を超える見込みがない場合、寄付を数年分まとめて特定の年に集中させる(バンドリング)ことで、その年だけ項目別控除を利用し、他の年は標準控除を利用する戦略が有効です。 |
3. 税額控除(Credit)を適用する、つまり支払い税額を減額する
税額控除は、税率をかける前の所得から差し引く「控除(Deduction)=課税所得を減らす」とは異なり、算定された税金そのものから差し引かれるため、節税効果が最も高いです。
| 税額控除 | 概要と検討ポイント |
|---|---|
| Child Tax Credit | 17歳未満の扶養家族がいる場合に利用できます。最高で$2,000/人(うち$1,600までは還付可能)など、家族構成に応じた非常に大きな恩恵があります。 |
| Earned Income Tax Credit, EITC (勤労所得税額控除) | 低~中所得の勤労者(W-2所得者も含む)を対象とした控除です。特に扶養家族がいる世帯にとって、還付性があり大きなメリットになる場合があります。 |
| 教育関連の控除 | American Opportunity Tax Credit (AOTC) や Lifetime Learning Credit (LLC) など、自身や扶養家族が大学教育を受けている場合に利用できる控除です。詳細はこちら。 |
