サラリーマン(W-2所得者)の節税対策

アメリカの給与所得者(サラリーマン、W-2所得者)が利用できる節税対策は限られていますが、主に1) 課税所得を減らす(税制優遇口座を利用) 2. 課税所得を減らす(控除最適化) 3. 税額控除(Credit)を適用する、つまり支払い税額を減額するという三つのアプローチに集中します。

1. 課税所得を減らす(税制優遇口座を利用

以下の口座への拠出(投資)は、「調整後総所得(AGI)控除前の控除(Above-the-line Deduction)」として扱われるため、標準控除を選択しても利用でき、節税効果が非常に高いです。(税制優遇口座はこれに限りません。)

節税対策概要とメリット
企業型年金 (401(k) / 403(b))拠出金が所得税の課税対象から外れます。特に会社がマッチング(Matching Contribution)を提供している場合、自己資金を使わずに資産を増やせるため、真っ先に満額拠出を目指すべきです。
個人退職口座 (Traditional IRA)401(k)に拠出してもなお余裕がある場合に利用します。企業年金に加入している場合、拠出できる所得に制限(MAGI制限)がありますが、成功すればその年の課税所得を減らせます。
健康貯蓄口座 (HSA)トリプル・タックス・アドバンテージ(拠出時、運用時、医療費に使用した際の引出し時が全て非課税)を持つ最も強力な節税ツールです。HDHP(高額控除医療保険)に加入していることが必須条件です。
教育貯蓄口座 (529 Plan)拠出金に対する連邦税の所得控除はありません(多くの州では州税の控除があります)。運用益が非課税で、適格な教育費(授業料、寮費、教科書代など)に使用する際には非課税で引き出し可能。

いかにそれぞれの税制優遇の内容・タイミングを比較します。

節税対策拠出時運用益引出時
企業型年金 (401(k) / 403(b))所得控除可能非課税所得として課税
個人退職口座 (Traditional IRA)所得控除可能非課税所得として課税
健康貯蓄口座 (HSA)所得控除可能非課税医療費として使用する限り(適格使用)は非課税
教育貯蓄口座 (529 Plan)所得控除不可非課税教育費として使用する限り(適格使用)は非課税

2. 課税所得を減らす(控除最適化)

Tax Return時には、標準控除(Standard Deduction)と項目別控除(Itemized Deductions)のどちらか有利な方を選択します。現在の標準控除額は高いため、多くのサラリーマンは標準控除を選びますが、以下のような戦略で項目別控除の利用が可能かどうかを検討します。

控除対策概要と検討ポイント
住宅ローン利息住宅を所有している場合、支払った住宅ローン利息は項目別控除の対象になります。不動産税や州・地方税(SALT)と合わせて、標準控除額を超えるか確認します。
州・地方税 (SALT)州所得税、固定資産税、売上税のいずれかを組み合わせて控除できますが、年間合計$10,000が上限と決められています(Married Filing JointlyでもSingleでも同額)。
慈善寄付バンドリング戦略:寄付金控除は項目別控除の対象です。標準控除額を超える見込みがない場合、寄付を数年分まとめて特定の年に集中させる(バンドリング)ことで、その年だけ項目別控除を利用し、他の年は標準控除を利用する戦略が有効です。

3. 税額控除(Credit)を適用する、つまり支払い税額を減額する

税額控除は、税率をかける前の所得から差し引く「控除(Deduction)=課税所得を減らす」とは異なり、算定された税金そのものから差し引かれるため、節税効果が最も高いです。

税額控除概要と検討ポイント
Child Tax Credit17歳未満の扶養家族がいる場合に利用できます。最高で$2,000/人(うち$1,600までは還付可能)など、家族構成に応じた非常に大きな恩恵があります。
Earned Income Tax Credit, EITC (勤労所得税額控除)低~中所得の勤労者(W-2所得者も含む)を対象とした控除です。特に扶養家族がいる世帯にとって、還付性があり大きなメリットになる場合があります。
教育関連の控除American Opportunity Tax Credit (AOTC) や Lifetime Learning Credit (LLC) など、自身や扶養家族が大学教育を受けている場合に利用できる控除です。詳細はこちら。

アメリカの教育関連の税制優遇制度

ここでは、以下のような、教育関連の支出があった場合、またはその他の税制優遇制度についてまとめています。

学生ローン利息の支払いがあった場合

Student Loan Interest Deduction (学生ローン利息控除)で最大$2,500の所得控除を受けられる可能性があります。詳細は下記およびIRSのサイトをご確認ください。

大学の学費の支払いがあった場合

学生一人につき年間最大$2,500の税額控除を受けられる(支払い税額が減額される)可能性があります。American Opportunity Tax Credit (AOTC)。このCreditに該当しない場合でも、Lifetime Learning Credit (LLC)で最大$2,000の税額控除を受けられる可能性があります。詳細は下記およびIRSのサイトをご確認ください。

子供の教育資金を貯める際の税制優遇制度を知りたい

将来の教育費用の準備のための金融口座で、収益が非課税でかつ、適格な教育費に使用する場合は非課税となる制度が大きく二種類あります。529 Plan (Qualified Tuition Plan) とCoverdell ESA (Education Savings Account)です。詳細は下記またはIRSのサイトをご確認ください。

1. Tax Deduction (所得控除)

Student Loan Interest Deduction (学生ローン利息控除)

年間に支払った学生ローンのうち、所得に応じて最大$2,500を所得から控除できます。これはItemized Deductionだけでなく、Standard Deductionを選択した場合でも適用可能です。

MAGIが$200,000($100,000)以上あると控除は受けられません。

詳細はこちらで確認してください。

IRS: Topic no. 456, Student loan interest deduction

2. Tax Credit (税額控除)

二種類の税額控除があります。一般的に大学に進学した場合に利用するのがAmerican Opportunity Tax Credit (AOTC)で、それを利用できない場合により制限が緩やかなLifetime Learning Credit (LLC)を検討できます。

AOTC (アメリカン・オポチュニティ・タックス・クレジット)

  • 最大控除額: 資格のある学生一人につき、年間最大 $2,500
  • 仕組み: 対象となる教育費の最初の $2,000 の100%、次の $2,000 の25%が控除されます。
  • 還付の可能性: クレジットの最大 40%(最大 $1,000)還付可能 (refundable) です。これは、たとえ納税額がゼロであっても、還付金として戻ってくる可能性があることを意味します。
  • 対象:
    • 高等教育機関(大学など)の最初の4年間の学生。
    • 学位またはその他の公認された教育資格の取得を目指している必要があります。
    • 少なくとも1学期、パートタイム以上の学生として登録している必要があります。
    • 各学生につき最大4年間請求可能です。
  • 所得制限 (MAGI):
    • 全額控除: 調整後総所得(MAGI)がSingleで $80,000 以下MFJで $160,000 以下の場合。
    • 控除のPhase-out: MAGIが上記金額を超えると、控除額は徐々に減額されます。
    • 控除不可: Singleで $90,000 以上MFJで $180,000 以上の場合、控除の対象外となります。

Lifetime Learning Credit / LLC(生涯学習クレジット)

  • 最大控除額: Tax Returnごとに、最大 $2,000(学生ごとではありません)。
  • 仕組み: 対象となる教育費の最初の $10,000 の20%が控除されます。
  • 還付の可能性: 還付不可 (nonrefundable) です。納税額をゼロまで減らすことはできますが、還付金は発生しません。
  • 対象:
    • 大学院を含むすべての高等教育の年が対象。
    • 学位取得を目指していなくても、仕事に必要なスキルを習得または向上させるためのコースも対象です。
    • 請求できる年数に制限はありません。
  • 所得制限 (MAGI): AOTCと同じですSingleで $90,000 以上、MFJで $180,000 以上で控除不可)。

重要: 同じ学生について、同じ年にAOTCとLLCの両方を請求することはできません。

3. Other Tax Benefits

これらは主に、教育資金の貯蓄に使用できる税制優遇口座に関するものです。

Qualified Tuition Programs (529プラン)

  • 概要: 適格な教育費のために貯蓄するための投資口座です。
  • 税制優遇: 口座内の収益は非課税で増え、適格な教育費(授業料、手数料、書籍費など)に使用するために引き出す場合も非課税になります。
  • 年間拠出額:連邦は無制限、各州もほとんどの場合教育資金を賄うには十分に大きいです。
  • 所得制限:なし
  • 州の優遇措置: 多くの州では、529プランへの拠出金に対して州税の控除またはクレジットを提供しています。

カバーデル教育貯蓄口座 (Coverdell Education Savings Accounts / ESAs)

  • 概要: 受益者の教育費の支払いのために設立された信託または管理口座です。
  • 税制優遇: 収益は非課税で増え、適格な教育費に使用するために引き出す場合も非課税です。
  • 年間拠出額:$2,000/学生/year が上限
  • 所得制限:あり。2025年はSingleは$110,000, MFJは$220,000からphase-out(拠出額上限の減額)が始まります。
  • 対象: 幼稚園から高校(K-12) および高等教育の両方の費用に使用できます。
  • 注意点: 年間の拠出額に制限があります(現在は受益者一人につき年間 $2,000)。

2025年の所得税率 – アメリカ連邦税と州税

tax rule update 2024

アメリカの個人所得税の概要

アメリカの個人所得税は、連邦所得税と州所得税の2つに分かれています。連邦所得税は全ての州で共通ですが、州所得税は州ごとに異なり、所得税が無い州が9つあります。

連邦所得税

連邦所得税は累進課税制度を採用しており、所得が増えるにつれて税率も上がります。2025年の連邦所得税率は以下の通りです(File Status SingleとMFJの場合):

税率SingleMarried Filing Jointly
10%$0 ~ $11,925$0 ~ $23,850
12%$11,926 ~ $48,475$23,851 ~ $96,950
22%$48,476 ~ $103,350$96,951 ~ $206,700
24%$103,351 ~ $197,300$206,701 ~ $394,600
32%$197,301 ~ $250,525$394,601 ~ $501,050
35%$250,526 ~ $626,350$501,051 ~ $751,600
37%$626,351 以上$751,601 以上

州所得税

州所得税は州ごとに異なり、税率や課税方法も異なります。例えば、カリフォルニア州では累進課税制度を採用しており、最高税率は13.3%です。

カリフォルニア州の個人所得税率

カリフォルニア州は累進課税制度を採用しており、所得が増えるにつれて税率も上がります。2024年のカリフォルニア州の個人所得税率は以下の通りです(SingleとMFJ):

税率SingleMarried Filing Jointly
1.00%$0 〜 約 $10,756$0 〜 約 $21,512
2.00%約 $10,757 〜 約 $25,499約 $21,513 〜 約 $50,998
4.00%約 $25,500 〜 約 $40,245約 $50,999 〜 約 $80,490
6.00%約 $40,246 〜 約 $55,866約 $80,491 〜 約 $111,732
8.00%約 $55,867 〜 約 $70,606約 $111,733 〜 約 $141,212
9.30%約 $70,607 〜 約 $360,659約 $141,213 〜 約 $721,318
10.30%約 $360,660 〜 約 $432,787約 $721,319 〜 約 $865,574
11.30%約 $432,788 〜 約 $721,314約 $865,575 〜 約 $1,442,628
12.30%約 $721,315 以上約 $1,442,629 以上

追加の税金

カリフォルニア州では、特定の高所得者に対して追加の税金が課されます。例えば、年間所得が1,000,000ドルを超える場合、上記に加えて追加で1%の「精神衛生サービス税」が課されます。

米国の年金制度と税制上の特徴

三層構造

米国における年金制度(Retirement System)は、「三層構造(Three-Pillar System)」として体系的に理解されています。

これは、政府が提供する公的年金、企業が提供する年金、そして個人が用意する貯蓄・投資の3つの柱から構成されており、それぞれが退職後の生活を支える役割を果たしています。

制度の主体制度名(代表例)税制上の特徴
第1の柱:公的年金連邦政府Social Security(社会保障)拠出はFICA税(給与税)を通じて行われる。給付の一部は課税対象となる。
第2の柱:企業年金雇用主(企業)401(k), 403(b), Defined Benefit Plans (DB)税制優遇が大きい(拠出・運用段階で優遇)。雇用主のマッチング拠出がある場合が多い。
第3の柱:個人貯蓄個人(家計)IRA(Traditional/Roth), NQ-Annuity, Brokerage AccountIRAは税制優遇が大きい。その他の一般口座は優遇なし。

1. 第1の柱:公的年金(Social Security)

Social Securityは日本で言う国民年金と厚生年金に該当するものと考えて差し支えないと思います。国民の最低限の生活を保障するために国が運営主体となる制度であるという点が共通しています。日本では国民年金を1階部分で拠出額固定、厚生年金が二階部分で拠出額は収入比例というような説明がされますが、米国ではこのSocial Securityの拠出額は収入が大きいほど大きくなり(年間上限あり)、結果的に給付額も大きくなるということから厚生年金も兼ねているというとらえ方もできそうです。

1.1 制度の概要

  • 目的: 国民の最低限の生活を保障するための基本的な所得保障制度。
  • 運営主体: 連邦政府(Social Security Administration, SSA)。
  • 財源: 雇用主と従業員が折半して納めるFICA税(連邦保険拠出法税)

1.2 給付の仕組み

  • 老齢・遺族・障害保険(OASDI): 主に老齢退職給付を指します。
  • 受給資格: 10年間(40クォーター)以上、FICA税を納付していること。
  • 標準受給開始年齢(Full Retirement Age, FRA): 生まれ年によって異なり、66歳~67歳に設定されています。
    • 繰上げ受給: 62歳から可能(給付額が減額)。
    • 繰下げ受給: 70歳まで可能(給付額が増額)。
  • 特徴: 給付額は過去の平均所得に基づいて計算されますが、高所得者ほど所得代替率が低く設計されており、あくまで生活の基盤を担うものです。

2. 第2の柱:企業年金(Employer-Sponsored Retirement Plans

企業が従業員のために提供する制度で、税制上の優遇措置(タックス・ディファード)が最大の特徴です。確定拠出型年金は日本でも主流になってきているものです。

2.1 確定拠出型年金(Defined Contribution Plans, DC)

給付額は確定しておらず、拠出された資金の運用成績によって将来の受取額が変動します。

制度名主な対象者Tax Timing概要
401(k) Plan一般企業(営利)の従業員拠出時に所得控除(Traditional)または非課税(Roth)。運用益は非課税。米国企業年金の主流。雇用主のマッチング拠出(Matching Contribution)が一般的。
403(b) Plan非営利団体、学校、病院の職員401(k)と同様401(k)と類似するが、投資対象がアニュイティやミューチュアルファンドに限定されることが多い。
457(b) Plan州政府・地方自治体職員401(k)と同様他のプランと並行して拠出できるため、高所得者にとって有利。

2.2 確定給付型年金(Defined Benefit Plans, DB)

雇用主が将来の給付額を約束する年金。近年は減少傾向にあります。

制度名特徴
Pension Plan勤続年数や最終給与に基づき、退職後の給付額が計算され、保証される。運用リスクは企業が負担。
Cash Balance PlanDBプランの一種だが、個人の仮想口座に積み立てる形式。近年、柔軟なDBプランとして注目される。

3. 第3の柱:個人貯蓄(Individual Retirement Savings)

個人が自主的に開設し、運用する退職勘定です。
Roth IRAは日本でいう個人型DC、いわゆるiDeCoに該当するものと考えて良いと思います。

3.1 個人退職勘定(IRAs)

個人で開設できる税制優遇のある退職貯蓄口座。

制度名特徴
Traditional IRA拠出時に所得控除。運用益は課税繰り延べ(引き出し時に課税)。
Roth IRA拠出時は課税済み。運用益と引き出し時は完全に非課税。特に若年層や将来の税率が高くなると予想される人に有利。
SEP IRA / SIMPLE IRA主に自営業者や小企業向けのIRA。拠出限度額が通常のIRAより高いことが多い。

3.2 その他の貯蓄・投資

制度名特徴
HSA (Health Savings Account)医療費に特化した貯蓄口座だが、65歳以降は事実上の退職口座として利用可能(トリプル・タックス・アドバンテージが最大の特徴)。
Brokerage Account一般の証券取引口座。税制優遇はないが、流動性が高く、いつでも引き出し可能。

この三層構造が、アメリカの退職後の収入を形成する基本的な枠組みとなります。特に、401(k)やIRAといった税制優遇口座の活用が、退職準備の中核を担っています。

アメリカで離婚する時に、税金関係で気を付けることがいくつかあります。離婚してから後悔しないよう事前によく理解しておきましょう。

1. 申告ステータス(Filing Status)はHead of Householdが有利

申告ステータスは、離婚によって独身になった場合にはSingle(独身)またはHead of Household(特定世帯主)のどちらかとなりますが、Standard Deduction(標準控除)および税率の観点でHead of householdの方が有利であると考えてよいと思います。(例えば例えば$50,000の課税所得があった場合、Singleステータスだと税率は22%ですが、Head of Householdステータスだと12%です。)離婚後にHead of Householdで申告する権利があるかどうかはよく検討しておくことをお奨めします。
また、離婚が成立前でも配偶者と別に申告をすることになる場合、条件によってみなし未婚としてHead of Householdを選択できる可能性があります。

Head of Householdの条件

  • 未婚またはみなし未婚
    • その年の12月31日時点で未婚であるか、または税法上みなし未婚とされることが必要です。みなし未婚とは、配偶者と別居しており、少なくともその年の最後の6ヶ月間は同居していない場合を指します。
  • 扶養家族(Dependent)がいること
    • 扶養家族として認定される子供、継子、養子、またはその他の親族がいることが必要です。この扶養家族は、その年の半分以上あなたと同居している必要があります。
  • 家計の半分以上を負担していること
    • あなたがその年の家計の半分以上を負担していることが必要です。家計には、住居費、食費、光熱費などが含まれます。

Filing Statusのうち、Married Filing Jointlyは、12月31日に婚姻状態でなければ選択することができません。したがって年末に離婚が成立している場合はSingle(独身)またはHead of Household(特定世帯主)のどちらかになります。

実際に離婚が成立していなくても、配偶者と別居している場合はHead of Householdを選択できる可能性があります。何らかの理由でMarried Filing jointlyを選択しない場合に、Head of Householdを選択できると税制上も不利になることを避けられます。

2. 扶養家族の取り決め

離婚後に、お子様などの扶養家族をどちらのタックスリターンで扶養家族(Dependent)として報告するのかは事前に合意しておくことをお奨めします。まれに扶養していない側の親が先にお子様を扶養家族として申告してしまい、リファンドを手にしてしまう、というケースもあるので注意が必要です。扶養家族(Dependent)として報告するためには、IRSによって定められた条件を満たしている必要があるため、離婚後の実態に即して検討・合意しておく必要があります。

Dependent(扶養家族)のためのDeduction (控除)やCredit (税額控除)には、主に以下のようなものがあります。

Deduction(控除)

Deduction(控除)内容
Medical Expense Deduction
(医療費控除)
扶養家族の医療費が総所得の7.5%を超える場合に控除できます。
Education Expense Deduction
(教育費控除)
扶養家族の教育費用に対する控除が適用される場合があります。

Credit(税額控除)

Credit(税額控除)内容
Child Tax Credit
(子供税額控除)
17歳未満の子供1人につき最大$2,000の税額控除が受けられます。
Additional Child Tax Credit
(追加子供税額控除)
Child Tax Credit(子供税額控除)を全額受けられない場合に、追加で最大$1,500の還付可能な税額控除が受けられます。
Credit for Other Dependents
(扶養家族税額控除)
子供税額控除の対象外の扶養家族1人につき最大$500の税額控除が受けられます。
Earned Income Tax Credit, EITC
(勤労所得税額控除)
低所得者向けの税額控除で、扶養家族の数に応じて控除額が増加します。
Child and Dependent Care Credit
(子供・扶養家族ケア税額控除)
扶養家族のケア費用に対する税額控除で、最大で支払った費用の35%が控除されます。
Adoption Credit
(養子縁組費用税額控除)
養子縁組にかかる費用に対する税額控除で、最大$14,890が控除されます。
American Opportunity Credit
(アメリカン・オポチュニティ・クレジット)
扶養家族の大学教育費用に対する税額控除で、最大$2,500が控除されます。
Lifetime Learning Credit
(ライフタイム・ラーニング・クレジット)
扶養家族の高等教育費用に対する税額控除で、最大$2,000が控除されます。

3. Alimony (配偶者扶養費)とChild Support(養育費)

2019年以降に成立した離婚についてはAlimonyに対する税制度が変わっており、現在ではAlimoni, Child Supportともに、それを支払う側は税控除の対象にはならず、受け取る側は所得に含める必要がないことになっています。

Alimony (配偶者扶養費)

Alimoniyは、支払う側は税控除の対象にはならず、所得から控除することができません。受け取る側は所得として申告する必要はありません。

Beginning January 1, 2019, alimony or separate maintenance payments are not deductible from the income of the payer spouse, or includable in the income of the receiving spouse, if made under a divorce or separation agreement executed after December 31, 2018. Divorce or separation may have an effect on taxes | Internal Revenue Service

Child Support(養育費)

Child Supportは、支払う側は税控除の対象にはならず、所得から控除することができません。受け取る側は所得として申告する必要はありません。

Child support payments are not taxable to the recipient (and not deductible by the payer). When you calculate your gross income to see whether you’re required to file a tax return, don’t include child support payments received.  Alimony, child support, court awards, damages 1 | Internal Revenue Service

4. 財産分与と税金

離婚時の財産分与は、夫婦が婚姻期間中に築いた財産を公平に分割するプロセスです。財産分与の対象となるのは、共同で所有している財産や負債です。これには、住宅、車、銀行口座、投資、退職金、そして負債(ローンやクレジットカードの残高)などが含まれます。

財産分与に関する税金の扱いは、以下のように異なります。

  1. 財産分与そのもの: 財産分与は、通常、税金の対象にはなりません。つまり、財産を受け取った側も、財産を譲渡した側も、その分与自体に対して税金を支払う必要はありません。
  2. 資産の売却: 財産分与の一環として資産を売却する場合、その売却益に対してキャピタルゲイン税が課されることがあります。例えば、家を売却して得た利益は、通常のキャピタルゲイン税の対象となります。
  3. 退職金や年金: 退職金や年金の分割は、特定の手続きを経ることで、税金の負担を最小限に抑えることができます。Qualified Domestic Relations Order(QDRO)を利用することで、退職金や年金の分割が可能となり、受け取る側が税金を支払うタイミングを遅らせることができます。
  4. 住宅の持ち分: 住宅を分与する場合、その持ち分に対しても税金が発生する可能性があります。例えば、住宅を売却せずに一方の配偶者が持ち続ける場合、その後の売却時にキャピタルゲイン税が発生することがあります。

タックスリターンの申告ステータス(Filing Status for Tax Return)はどれを選べばいいのか?またどれがお得なのか?

タックスリターンの「Filing Status」(申告ステータス)とは、納税者の税務上の状況を示す分類のことです。これにより、適用される税率や控除額が決まります。申告ステータスは、納税者の婚姻状況や扶養家族の有無などに基づいて選択されます。それぞれのステータスには特定の条件があり、適切なステータスを選ぶことで税金の負担を軽減することができます。具体的な条件や詳細については、IRS(米国国税庁)のウェブサイトや税理士に相談することをお勧めします。

Filing Status (申告ステータス)対象特徴
Single (独身)その年の12月31日時点で独身の人。最も基本的な申告ステータスで、他のステータスに該当しない場合に使用します。
Married Filing Jointly (夫婦合算申告)その年の12月31日時点で結婚している夫婦。夫婦の収入を合算して申告するため、税率が低くなることが多いです。多くの控除やクレジットを利用できるため、一般的に最も有利なステータスです。
Married Filing Separately (夫婦別々申告)その年の12月31日時点で結婚しているが、夫婦が別々に申告する場合。夫婦合算申告に比べて税率が高くなることが多いですが、特定の状況(例えば、配偶者の税務問題を避けたい場合など)では有利になることもあります。
Head of Household (世帯主)独身で、かつ扶養家族がいる場合。独身ステータスよりも有利な税率が適用され、特定の控除が利用できます。扶養家族のために家計の半分以上を負担している必要があります。
Qualifying Widow(er) with Dependent Child (寡婦または寡夫)配偶者を亡くした後、2年間このステータスを使用できます。扶養家族がいることが条件です。夫婦合算申告と同じ税率が適用されるため、税負担が軽減されます。

連邦の所得税率から考えて税負担割合が小さいと考えられるものから

独身の場合(12/31時点で)

  1. Married Filing Jointly (ただし当年に配偶者が死亡した年のみ)
  2. Qualifying Widow(er) with Dependent Child
  3. Head of household
  4. Single

結婚している場合(12/31時点で)

  1. Married Filing Jointly
  2. Married Filing Separately

となります。ただし、全体の税負担は所得以外に様々な条件によって決まるので、それらを考慮して最終的に申告ステータスを決めることになります。

タックスリターン (Tax Return) のやり方はさまざまなオプションがあります。専門家に相談する、オンラインツールやソフトウェアを活用するなど、自分に合った方法を選択できます。

1. 自分で申告する

オンラインツールの利用

  • TurboTax: 使いやすいインターフェースで、ステップバイステップのガイドが提供されます。
  • H&R Block: 無料版から有料版まであり、複雑な税務状況にも対応しています。
  • TaxAct: コストパフォーマンスが高く、基本的な税務申告に適しています。

紙のフォームを使用

  • IRSのウェブサイトからフォームをダウンロード: Form 1040やその他の必要なフォームをダウンロードし、手書きで記入して郵送します。

2. 税理士(CPA)やEnrolled Agent(EA)に依頼する

CPA(Certified Public Accountant)

  • 会計と税務の専門家: 複雑な税務状況やビジネスの税務申告に対応できます。
  • 費用: 一般的に高額ですが、専門的なアドバイスが得られます。

Enrolled Agent(EA)

  • 税務の専門家: IRSに認定された税務専門家で、税務申告や税務調査の代理が可能です。
  • 費用: CPAよりも比較的安価で、税務に特化したサービスを提供します。

3. 税務支援プログラムの利用

VITA(Volunteer Income Tax Assistance)

  • 低所得者向けの無料サービス: 年収が一定以下の人や高齢者、障害者を対象に、無料で税務申告の支援を行います。

TCE(Tax Counseling for the Elderly)

  • 高齢者向けの無料サービス: 60歳以上の高齢者を対象に、税務申告の支援を行います。

4. 税務ソフトウェアの利用

  • QuickBooks: 自営業者や小規模ビジネス向けの会計ソフトで、税務申告もサポートしています。
  • Xero: クラウドベースの会計ソフトで、税務申告の機能も備えています。

税務申告が複雑な場合や不安がある場合は、CPAやEAに相談することをお勧めします。彼らは専門的な知識を持ち、正確かつ効率的な申告をサポートしてくれます。

タックスリターンのご相談はこちらから

米国税理士とは英語でEnrolled Agent (EA) と呼ばれ、アメリカ合衆国内国歳入庁(IRS)によって認定された税務専門家です

アメリカでは所得を得た人は原則すべてタックスリターンの申告をする必要がありますが、それを正確かつ効率的に申告できるように支援するのが税理士 (EA)や会計士 (CPA)の役割です。タックスリターンの観点ではEAもCPAも同等の権限をもってクライアントの税務上の問題に対応できます。

Enrolled Agent (EA)

Enrolled Agent (EA) は、アメリカ合衆国内国歳入庁(IRS)によって認定された税務専門家です。EAは、税務上の問題について全ての納税者を代理し、IRSの各オフィスで活動する権限を持っています。EAは、以下のような役割を担います:

  • 税務申告の提出(タックスリターン): 個人、パートナーシップ、企業、信託、相続人などの税務申告を行います。
  • 税務相談: 税務計画や税務問題のアドバイスを提供します。
  • 税務調査の代理: IRSの調査や控訴において納税者を代理します。
  • 税務訴訟の代理: 税務上の紛争を解決するために訴訟を行います。

EAの資格取得には、3部構成の試験(Special Enrollment Examination、SEE)に合格するか、かつてIRSの従業員であった経験が必要です。また、EAは3年ごとに72時間の継続教育を受ける必要があります。

※ IRSのEnrolled Agentについての情報はこちら

CPA(Certified Public Accountant)

CPAは、州ごとに認定された公認会計士であり、会計や税務に関する幅広い知識とスキルを持っています。CPAは、以下のような役割を担います:

  • 財務報告: 企業や個人の財務状況を評価し、財務報告を行います。
  • 監査: 企業の財務状況を監査し、公正性を確認します。
  • 税務申告: 企業や個人の税務申告を行います。
  • 財務計画: 企業の財務計画や戦略を立案します。

比較

  • 専門分野: EAは税務専門家であり、CPAは会計と税務の両方に精通しています。
  • 資格取得: EAはIRSによって認定され、CPAは州ごとに認定されます。
  • 役割: EAは税務上の問題を専門とし、CPAは財務報告や監査も行います。
  • 代理権限: EAは全ての納税者を代理でき、CPAは州ごとに制限があります。

このように、EAとCPAはそれぞれ異なる専門分野と役割を持っていますが、どちらも税務に関する知識とスキルを活かして、企業や個人のために貢献しています。

EAの資格試験について

EA資格は、アメリカ合衆国内国歳入庁(IRS)が認定する国家資格で、税務に関する専門知識を証明するものです。この資格を取得することで、アメリカ国内で税務申告業務を行うことができます。

試験内容

EA資格試験は、以下の3つの科目から構成されています:

  • Individual Tax (試験時間:2時間30分)
  • Business Tax (試験時間:2時間30分)
  • Representation, Practices, and Procedures (試験時間:2時間)

受験資格

EA資格試験には、18歳以上であれば誰でも受験できます。学歴や職歴の制限はありません。

試験の難易度と準備期間

EA資格試験は、日本の税理士試験と比較すると難易度が低いとされています。初学者でも学習開始から6ヶ月~8ヶ月程度で準備が可能です。試験はすべて四肢択一問題で、記述問題はありません。

試験の特徴

  • 試験形式:四肢択一問題のみ
  • 合格率:各科目の合格率は約60~70%
  • 短期間での合格:初学者でも短期間で全3科目合格を目指せる

資格取得後のメリット

EA資格を取得すると、名刺に「EA(米国税理士)」と記載できるようになり、実務経験なしでも「EA(米国税理士)」として登録可能です。これにより、税務業務のステータスアップや転職・就職でのアピールが可能です。

ロサンゼルスのタックスリターン

los angeles tax

ロサンゼルスはカリフォルニア州に位置しており、カリフォルニア州の税務当局であるCalifornia Franchise Tax Boardが州所得税の申告と納税を管理しています。ロサンゼルスに住む個人やビジネスオーナーは、連邦所得税と同様にカリフォルニア州所得税も申告する必要があります。

カリフォルニア州のタックスリターンにについてはこちら

タックスリターンについてロサンゼルス独自のプロセスはありませんが、ロサンゼルスには独自の税制度がいくつかあります。

Mansion Tax(高額不動産譲渡税)

Mansion Tax(高額不動産譲渡税)は、2023年4月1日から施行され、ロサンゼルス市内で500万ドル以上の不動産を譲渡する際に課されます。この税金は、手頃な価格の住宅プロジェクトに資金を提供し、ホームレスの危険にさらされているテナントにリソースを提供するために設立されました。

具体的には、500万ドル以上の不動産には4%、1000万ドル以上の不動産には5.5%の税率が適用されます。この税金の導入により、ロサンゼルス市はすでに多額の税収を得ており、ホームレス対策や低中所得者向けの住宅建設の財源として活用されています。

この税制は、市民からの支持を受けており、特に富裕層からの税収を社会的に有益なプロジェクトに活用するという点で評価されています。

他にもロサンゼルス市には以下のような税金があります。

  • ビジネス税 – Business Tax: ロサンゼルス市では、ビジネスを運営する企業に対してビジネス税が課されます。税率はビジネスの種類や規模によって異なります。
  • ホテル税- Hotel Tax (Transient Occupancy Tax): ロサンゼルス市内のホテルや宿泊施設に宿泊する際に課される税金です。宿泊料金の一部として徴収されます。
  • 駐車税 – Parking Occupancy Tax: ロサンゼルス市内の駐車場を利用する際に課される税金です。駐車料金の一部として徴収されます。

カリフォルニア州のタックスリターン

california tax

カリフォルニア州のタックスリターンは、連邦所得税と同時に報告するのが一般的です。カリフォルニア州の税務当局であるCalifornia Franchise Tax Boardは、連邦所得税の申告と同じ期限である4月15日を申告期限としています。これにより、納税者は連邦所得税と州所得税を同時に申告することができるため、申告書の作成から報告の提出まで連邦所得税と同時に行うのが一般的です。税理士もTurboTaxなどのツールもそのように対応しています。

  • 高い所得税率: カリフォルニア州の所得税率は全米で最も高い部類に入ります。最高税率は13.3%で、これは連邦所得税と合わせると非常に高い税負担となります。連邦税の最高税率37%を合わせると高額所得者は50%を超える所得税を課されることになります。
  • 累進課税制度: カリフォルニア州も連邦政府と同様に累進課税制度を採用しており、所得が高いほど高い税率が適用されます。
  • 控除とクレジット: カリフォルニア州には、住宅ローン利息控除や教育費控除など、さまざまな税額控除があります。これにより、納税者は税負担を軽減することができます。
  • 高い不動産税: カリフォルニア州の不動産税率は比較的低いですが、住宅価格が高いため、実際の税負担は大きくなります。
  • 消費税: カリフォルニア州の消費税率も高く、州全体で平均的に高い税率が適用されています。